相続手続きの基礎知識
ここからは相続手続きに関する基礎知識をご紹介しています。また、かわせ事務所のピンポイント解説ブログも参考になりますのでご覧ください。
相続手続きの手順
相続手続きとは、被相続人の遺産について相続人を確定し、それぞれの相続人に承継させるための手続きです。相続人が複数いる場合、相続開始と同時に遺産は、相続人の共有になります。
- 相続の開始
相続は被相続人の死亡と同時に始まります - 遺言書の有無を確認する
法的に有効な遺言書がある場合と無い場合とでは相続手続きの方法が大きく異なります。遺言書作成はこちらをご覧ください - 必要書類の収集と相続人確定
戸籍謄本等を取得して相続人を確定させます。相続人の記憶だけでは手続きできません - 遺産を確定する
遺産とは被相続人に属する財産すべてです。プラス財産もマイナス財産(借金等)もすべてです - 相続の選択をする【3か月以内】
3種類ある相続の方法から3か月以内に選択をします - 遺産分割協議を行う
相続人全員で「誰が何をどれだけ取得するか」を協議し、証するものとして遺産分割協議書を作成します - 相続税の申告をする【10か月以内】
基礎控除を超える遺産金額の場合、相続税を納めなければなりません - 遺産の分割をする
遺産分割協議書に従い、現実にそれぞれの遺産をそれぞれの相続人のものへと分割します
相続の開始はいつからか
相続の開始は、被相続人の死亡と同時に、被相続人の住所地で始まります。被相続人に属していた財産、つまり遺産はこの時点で「相続人の共有」となります。
共有なので、原則として相続人の一人が遺産を自由に使ったり売ったりすることはできません。相続人が複数いる場合は、遺産分割が行われるまで共同相続人の共有となります。
遺言書の有無を確認する
遺言書の有無を確認します。被相続人宅の金庫、仏壇、貸金庫、机の引き出しなどを確認して遺言書が無いか確認します。遺言書は法定要件を満たしている、法的に有効な遺言書である必要があります。遺言書の有無は非常に重要です。以下のように遺言書がある場合と無い場合とでは、相続手続きの方法が異なるからです
- 遺言書がある場合
遺言書に記載されているとおりに遺産を分割します。遺留分に注意します - 遺言書が無い場合
相続人全員で遺産分割協議をして遺産分割協議書を作成し、遺産を分割します
必要書類収集と相続人の確定
相続手続きは「誰が何をどれだけ取得するか」ですが、相続人の確定は「誰が」にあたります。相続人が誰かということは、相続人の記憶だけではどうにもなりません。遺産分割の手続きでは戸籍謄本等を提出して、相続人の記憶ではなく書類で証明する必要があります。
戸籍謄本等により相続人を確定
戸籍謄本は、死亡時点のものだけではありません。相続人を確定するため、原則として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などを確認します。戸籍の附票は戸籍とは異なり、住所の履歴を確認するために必要となる場合があります。
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
データ化された戸籍 - 改製原戸籍
様式変更やデータ化のために改製する前の、元の戸籍に記載されている内容 - 除籍謄本
転籍・死亡・婚姻が原因で誰もいなくなった戸籍
法定相続情報一覧図の作成
相続人を確定できたら、相続関係説明図を作成すると遺産分割協議が円滑になる場合があります。また、相続手続きの最後に各種遺産分割の手続きをすることを考えると、法定相続情報一覧図を作成しておくことを推奨します。
法定相続情報一覧図とは、戸籍謄本等をもとに被相続人と法定相続人の関係を一覧にした図を作成し、必要書類とともに法務局へ申し出て、登記官の確認を受ける制度です。
交付された一覧図の写しは、戸籍謄本等の束に代えて各種相続手続きに利用できる非常に便利な書類です。一覧図の写しは必要な通数を無料で交付してもらうことができます。
また、法務局での保存期間中は、当初の申出人から再交付を申し出ることも可能です。必要書類には被相続人の戸籍謄本等だけではなく相続人に関する戸籍謄本等もあり、相続関係によって必要な書類が異なります。
相続人の順位とは
相続人の順位とは、以下のとおりです。先順位の人がいないときに、次順位の人が繰り上がります。相続人は戸籍謄本等を読み解いて確定します。
- 配偶者
常に相続人になる。配偶者は常に相続人 - 第1順位
子と代襲相続人。胎児(生きて出生)・養子・非嫡出子も相続人 - 第2順位
直系尊属。直系尊属は父母など上の世代。複数なら最も近い人のみ - 第3順位
兄弟姉妹と代襲相続人。代襲相続は一世代のみ
民法
(子及びその代襲者等の相続権)第八百八十七条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)第八百八十九条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)第八百九十条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。引用元: e-Gov 法令検索
遺産を確定する
相続手続きは「誰が何をどれだけ取得するか」ですが、遺産の確定は「何を」にあたります。遺産は、被相続人に属する財産のすべてですので、プラス財産だけではなく、借金などのマイナス財産も含みます。
後述する「相続の選択」において、相続放棄を検討するのはこの段階です。生前に事業をされていた方は事業資金の借入れをされていることがあり、マイナス財産として残っている可能性があります。
被相続人の自宅において、机の引き出しや金庫などを確認して借金の痕跡を調べます。多額の借金があるにもかかわらず相続放棄をしない場合、相続人が借金の返済をすることになります。遺産を確定できたら財産目録を作成します。財産目録は遺産分割協議の際に資料として使えます。
相続の選択は期限に注意
相続の選択とは、3種類ある相続の方式からひとつを選択することです。原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に選択しなければならず、この3か月という期間を熟慮期間といいます。なお、一定の場合には家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることができます。
- 単純承認
プラス財産もマイナス財産もすべて相続します - 限定承認
相続人全員で申述してする方式ですが、手続きがかなり煩雑です - 相続放棄
家庭裁判所で手続きをし、成立すると最初から相続人ではなかったことになります
なお、注意が必要なのは、法定単純承認です。相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合など、法律で定められた事由に該当すると単純承認をしたものとみなされ、その後に限定承認や相続放棄をすることができなくなる場合があります。
相続放棄とは
相続放棄とは、3か月以内に家庭裁判所で申述してする手続きです。相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになります。相続の中で最も勘違いが多いのが相続放棄で、相続人たちの前で「放棄します」と宣言しても相続放棄をしたことにはなりません。
相続放棄の要件は、自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内の放棄であること、放棄前に単純承認、限定承認、法定単純承認事由がないことです。
遺産分割協議を行う
遺産分割協議は、共同相続人全員で遺産の分割方法などを取り決めることです。包括受遺者や相続分を譲り受けた者がいる場合には、これらの人も遺産分割に加わることがあります。
遺産分割協議は、遺産分割の当事者となる人全員の合意が必要です。ただし、必ずしも全員が一堂に集まって協議する必要はなく、1人が協議案を作り、その内容について全員の承諾が得られれば成立します。
遺産分割協議のなかで、それぞれの取得する遺産を相続分といいます。相続分は、法で定められた法定相続分があり、法定相続分に従って協議を進めると円滑です。
なお、未成年者が相続人の中にいるときは、原則として親権者が代理して遺産分割協議を行います。ただし、親権者と未成年者がともに相続人となる場合など、両者の利益が相反するときは親権者が代理することができません。この場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求し、選任された特別代理人が未成年者を代理して協議に加わります。
法定相続分とは
法定相続分とは、被相続人の財産である遺産を分割する上で基礎となる、相続人それぞれの相続割合です。
- 第1順位 配偶者と子
配偶者2分の1、子2分の1(非嫡出子と嫡出子、実子と養子は同割合) - 第2順位 配偶者と直系尊属
配偶者3分の2、直系尊属3分の1(実親と養親は同割合) - 第3順位 配偶者と兄弟姉妹
配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。遺産を分割する際には注意が必要です。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議が整った証として遺産分割協議書を作成します。遺産の分割方法を記載し、相続人全員の署名押印をします。この遺産分割協議書は、金融機関の手続きや自動車の名義変更、不動産の登記など各種名義変更(遺産の分割)に必要な書面であり、相続手続きの必要書類の中で最も重要といえます。
また、遺産分割協議書は相続人全員の合意を証するものですので、遺産の分割が完了した後で無用なトラブルとなることを防止する役目もあります。
民法
(法定相続分)第九百条
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。引用元: e-Gov 法令検索
相続税の申告
相続税とは、相続によって取得した遺産にかかる税金を申告により納めることです。相続税には基礎控除があり、課税価格の合計が基礎控除額以下なら課税されません。よって、ほとんどの場合は課税されないと考えることができます。
先述した「遺産を確定する」の時点で相続税が課税されるかどうか、おおよそ判明します。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内なので、早い段階で確認をする手順とさせていただいています。
相続税の基礎控除は、基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)です。基礎控除額を超える場合には相続税の申告をして、基礎控除額を超えた部分につき課税されます。なお、相続税に関するご相談とご依頼は税理士へお願いします。相続税申告は税理士の業務管轄です。
遺産分割の手続き、名義変更
最後に、現実に遺産をそれぞれの相続人に分割します。分割方法は遺産分割協議書に記載したとおりであり、「名義」がある遺産に関しては名義変更の手続きをして所有者を被相続人から相続人にします。現実に遺産分割をする主なものとしては以下のとおりです。
- 現金
タンス預金など現金です。名義というものがありませんので受領すれば完了です - 預貯金
金融機関の被相続人名義の口座を解約、名義変更します。相続人自身で手続きすることも可能です(銀行は親切です) - 自動車の相続手続き
普通車と軽自動車では手続き方法が異なります。必要書類を添えて運輸支局や軽自動車検査協会で手続きをします - 動産
遺産分割協議書に記載した動産があれば、受領だけで完了です - 不動産
不動産(土地・建物)は相続登記が必要です
相続登記とは
相続登記とは、相続によって取得した不動産について、被相続人から相続人へ所有権の登記を変更する手続きです。相続登記義務化により、相続によって不動産を取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする義務を負います。
なお、2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象となります。なお、相続登記に関する相談や依頼は司法書士へお願いします。登記は司法書士の業務管轄です。













